史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「そういうのは男が言うセリフだろ。

ーーそれとも、口説かれてるの?俺」

霧島さんの指先が私の頬に触れる。

そのままゆっくりと頬を撫で、唇の上で止まる。

私はその長く綺麗な指先をそっと口に含んだ。


霧島さんの指はひんやりと冷たかった。


「やっぱ誘ってるだろ、お前」

霧島さんがいつもより低い声で私の首筋に顔を寄せ、ささやいた。


何も答えない私に霧島さんが重ねてささやく。


「まぁ、いいか。 どっちが誘ったんでも」

霧島さんの唇が私の首筋から鎖骨にゆっくりと降りていく。


月明かりの下、霧島さんの動作はとても美しくて、私はなんだか他人事のようにその姿を眺めていた。


「ーー冷静なんだな」

霧島さんが私の顔を覗き込んで、ニヤリと笑った。

「その余裕、無くしてやるよ」

そう宣言すると、霧島さんは私の唇を塞いだ。


ーー冷たい唇。


霧島さんは指先だけでなく、唇もとても冷たかった。

けど、その冷たい唇が不思議と心地良かった。
< 27 / 72 >

この作品をシェア

pagetop