史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
もう何年も会っていないけど、私の父親はギャンブル狂いだったらしい。

今までギャンブルにはまる人なんて馬鹿だって見下していたけど、やっぱり私も父親の血を受け継いでいるのかも知れないな。


そろそろ潮時、

火遊びはもうおしまい、

今のうちに止めておけって

理性がはっきりと告げているのに、心はズルズルと抜け出せないでいた。


「そろそろ腹へったな。
何か食べに行くか。 何がいいかな。
佐倉は? 何、食べたい?」

私の葛藤を知ってか知らずか、霧島さんは呑気にごはんの心配をしている。


今日は土曜で、私はお昼過ぎに霧島さんの部屋に来て二人でのんびり過ごしていた。

夕食に出るにはちょうどいい時間だ。


霧島さんは私を色んなお店に連れて行ってはご馳走してくれる。

別にそんなものは求めてないのだけど、彼なりにこの関係に対する罪ほろぼしみたいなものらしいので有難く受け入れていた。

愛人にプレゼントを買ってしまう心理と同じなんだと思う。


「そうですねぇ、和食がいいかな〜。
なんか家庭料理っぽいのが食べたい気分です」

「家庭料理・・・って逆に難しいな。
具体的に何食べたい?」

「焼き魚に煮物とか。 美味しい定食屋さんないですかね!?」

「うーん、焼き魚に煮物なら俺が作ろうか?」

そういえば、霧島さんは料理が得意だと言っていた。


けど・・・


「お家でご飯って・・・なんか普通のカップルみたいで変じゃないですか?」

眉間に皺を寄せた私を見て、霧島さんは屈託なく笑う。

「いいじゃん、たまにはさ。
作るから、ちょっと待ってろ」
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