史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「ご馳走さまでした! 美味しかったです。 洗い物しちゃいますね」


ーー瑠花


キッチンでお皿を洗っているとふいに霧島さんが私の名前を呼んだ。

ベッド以外で名前を呼ばれるのは初めてのことで、不覚にもドキっとしてしまった。


「はい。 何ですか?」

思わず仕事中のような事務的な返事をしてしまう。

中学生じゃあるまいし、何を動揺してるんだか。


「今日、泊まってく?」


今日は土曜日で明日は何の予定もない。

泊まれないことはないけど・・・


「あっ、えーと。明日は早いのでこれ片付けたら、今日は帰ります」


嘘ついちゃった・・・。


何でだろう。



霧島さんと朝を迎えたくなかった。

朝になると魔法が解けちゃうから。

甘い夜が、楽しい時間が、

全て偽物だって突きつけられるから。



そんな事は納得済みの関係だけど、今日はすごく楽しかったから霧島さんの優しい顔だけを覚えておきたい。

冷たい朝は要らない。



「そっか、わかった」

ほんの一瞬、霧島さんが淋しそうな顔をした気がした。


ううん、私がそう思いたいだけなのかも知れない。


本当にもう潮時だな・・・
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