史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
霧島さんは仕事の報告でもするかのように顔も声もいつもと何一つ変わらなかった。

もちろん涙も見せない。


けど、泣きたいんだと思った。

少なくとも14歳だった霧島さんは泣きたかったんだと思う。


私は霧島さんの頭をぎゅっと胸に抱きしめた。

会った事もない霧島さんのお母さんが憎らしく、妬ましかった。


最悪のやり方でだけど、霧島さんの心を独り占めしている人。


もう何年も、何年も。



「はぁー。 初めて人に話したから、なんかものすごく疲れた。
悪かったな、重い話して。忘れてくれていいから」

霧島さんは少しさっぱりしたような顔で苦笑した。


「お前は俺のこと何も聞かないのに、ついこっちから話したくなるのは何なんだろうな。 そういうテクでもあんの?」

「ないですよ、そんなテクニック」

私もつられて少し笑った。


「お前といると楽でいいな。
金持ち男を捕まえたら俺のこと捨てていいけど、それまでは一緒にいてよ。瑠花ちゃん」

霧島さんは軽い口調でそう言うと、頬に優しくキスを落とす。


その甘い言葉と優しいキスは細いナイフのように、私の心を突き刺した。

傷口からじわりと鈍い痛みが広がる。




私が霧島さんを好きにならなければ、きっとずっと側にいられる。


この気持ちが霧島さんにバレてしまったら・・・



まるで出口のない迷路を歩かされてるみたいだ。
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