史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「乾杯」

「お疲れさまです」

ジャズの流れる店内にカチンとグラスが重なる音が響く。

ここは六本木の高級ホテル内にあるイタリアンレストラン。

お店の雰囲気もお客さんの雰囲気もすごく上等で、慣れない私は何だか落ち着かない。


私もネイビーのコクーンワンピースにパールのネックレスとピアス、ゴールドレースのパンプス と精一杯のお洒落をしてきたつもりだけど・・・

ブラックのスーツをきりりと着こなす霧島さんと並ぶと、さぞかし見劣りしてるんだろうなぁ。


そんな私の心を見透かしたように霧島さんは甘く囁く。

「他のどの女より瑠花が一番綺麗だから、堂々としてろ」


お世辞でも・・・嬉しい。

霧島さんが綺麗と思ってくれるなら、それで充分だ。


「今日は今まで頑張ったご褒美なんだから、そんなら固くならずに楽しめよ」


そうなんだ、今日は霧島さんからのご褒美ディナー。

死ぬ思いで頑張ったおかげで、ウィザーの代わりのお店が見つかって先日無事に契約を済ませた。

ウィザーに負けないくらい話題性のある北欧ブランド。
こちらも日本初出店。

大手柄だといって、何と社長直々にお褒めの言葉まで頂いた。
社長の顔なんて初めて間近で見たわ。


でも、落ち着かないのはお店のせいだけじゃない。

やっと決心したの。


たとえ、今の関係が壊れてしまったとしても・・・


霧島さんに気持ちを伝えたい。


「きっ、キリシマさんっ」

緊張し過ぎて声が裏返ってしまった。
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