史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
康太とは大学時代に所属していた映画サークルで出会った。彼は3つ歳上の優しい先輩だった。

付き合い出したのは彼が社会人になってすぐの頃だった。
優しくて、正直で、何事にも大らかな彼がとても好きだった。

家庭の事情から恋愛に積極的になれなかった私にとっては初恋同然だった。
いつか結婚できたら・・なんて甘いことも考えていた。


付き合い出して5年たったある日、唐突に別れを切り出された。

親にすすめられた相手とお見合いするからという理由で。

康太の父親は会社を経営していて、彼は大事な跡継ぎだった。
私のような母子家庭の家の子と付き合うなんて絶対反対だと言われ、康太はあっさり説得されてしまったようだった。


好ましいと思ってた彼の優しさや素直さは優柔不断さと幼さの裏返し。

大らかさは無神経と紙一重。


康太は悪気なく私に別れをつげ、あろうことかお見合い相手との結婚パーティーの招待状まで送ってきたのだった。





「アイツとのことがあったから、恋愛には興味なくなったの?」

「・・・なんか馬鹿馬鹿しくなっちゃったんです。 5年間も付き合ってきて、好きだと思ってたのに、私は彼の何を見てたんだろうって。
結局、都合の良いところしか見てなかったんですよね。

恋愛感情なんてまやかしだなぁと。
だったら、お金とか分かりやすい条件で選んだ方がいっそ潔いかなって」
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