史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
「よかったな。 仕事のことは気にしなくていいから、しばらくついててやれ」

「はい」

「じゃ、俺は帰るけど、何かあったら遠慮せず連絡しろよ」

「本当にありがとうございました。
霧島さんがいなかったら、一生後悔することになったかも知れません」

霧島さんがいなかったら、つまらない意地をはってここには来なかったかも知れない。


「うん。お前はまだ間に合うんだから、ちゃんとお母さんと話せよ」

「霧島さん・・・」

「俺はものすごい後悔してる。

ほんとは様子がおかしいのに気がついてたのに、面倒で気づかない振りしてた。
あの日、一言でも声をかけてればって・・」

いつもの自信たっぷりの霧島さんとは別人のような弱々しい笑顔に胸が痛んだ。

今すぐ過去に飛んでいって、14歳の霧島さんの側にいてあげたい。

けど、それはできないから。

せめて・・・


私は霧島さんを抱き締めた。

強く、強く。


「・・・大丈夫です」


「何がだよ?」


「何でもです」


霧島さんは呆れたように私を見下ろして、ふっと笑った。



もう後悔しなくていい。

霧島さんは何も悪くない。

これ以上苦しんで欲しくない。


お母さんだって、きっとそう思ってる。
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