史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
6章 最低男と甘いキスを
「あ、佐倉さーん。 お久しぶりです。
現地は順調ですか?」

今も本社に残っている森口さんが白いスカートを翻して、私のところに駆け寄ってくる。


「うん、おかげさまで売上も絶好調」

私の言葉に森口さんがパチパチと拍手を贈ってくれる。



今日は契約書整理のために1ヶ月振りに本社出勤だ。
夢見ヶ丘テラス勤務にすっかり慣れてしまったせいか、何だか懐かしいような気さえする。

夢見ヶ丘テラスの開業チームは既に解散していて、私と霧島さんがいたデスクには別の人が座っている。

霧島さんは一つ下のフロアに席を移したはずだ。


「そういえば、佐倉さん聞きました?
霧島さんの噂」


霧島さんは相変わらず噂の絶えない人のようだ。

今度はどこの部署の女の子と噂になったんだろうか。


「霧島さん、うち辞めちゃうみたいですよ」


うち?


辞める?



「前にいた外資の会社の人と一緒に会社立ち上げるらしいですよ!
部長までは間違いないって言われてましたけど、まさか独立しちゃうなんて。
さすがですよね〜」

「えっ・・・」


そっか。

辞めちゃうんだ、霧島さん。


「そうそう、霧島さんが佐倉さんのこと引き抜いちゃわないかって上の人達、すごーく心配してますよ。
霧島さん、佐倉さんのこと前から買ってたし、今回の夢見ヶ丘テラスの成功も二人の力じゃないですか」


「・・・」





そっか、もう一緒に仕事する機会は二度と来ないんだ。
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