史上最悪!?な彼と溺甘オフィス
私は霧島さんに近づいて、手を差し出す。

「宣戦布告です。 私、霧島さんに負けないくらい今の仕事、極めてみせます。

だから、またいつか一緒に仕事しましょう」

泣きたいのを堪えて、精一杯の笑顔でそう言った。

霧島さんは呆気に取られた顔で呆然としている。

「握手、してくれないんですか?」

「いや、悪い。 あまりにも予想外で・・」


霧島さんが差し出された私の手を取ってくれたので、私はにっこりと微笑んだ。

「私、その頃にはものすごくいい女になってる予定なんで、きっと霧島さんころっと落ちちゃいますよ。

楽しみにしててくださいね」


「はぁー、参った」

霧島さんは、大きな溜息とともにボソッとそう呟くと握手していた私の手をぐんっと強く引いた。

引っ張られてバランスを崩した私は霧島さんの胸の中に倒れこんだ。

「もうっ。急に引っ張らないでくだ・・」


私の抗議の声を無視して霧島さんは私を抱き締めた。

腕に力がこもるのを肌で感じる。


「お前には負けたわ。俺の完敗」


「ーー霧島さん?」


「お前が言ったんだろ。絶対に諦めちゃいけない時があるって」


「なんの話ですか?」


「夢見ヶ丘テラスにはあの区画、俺の人生にはお前だな」


「それって、どういう意味で・・」



ーー好きだ。


ーーーもう、とっくに落ちてる。
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