七色の空
福生の目に映った女性は、遠目にではあるが髪の長い美しかろう雰囲気いま女性を救おうと必死になっている男は、紛れもなく生まれながらにして下半身に障害をもっている。今にも橋から地球の重力に逆らうことなく落下しようとする女性を救うには同じく三階建てマンション程の高さから目下の川に飛び降りる他ない。男の突進は女の落下を見届けておわるようなオーラは、み塵(じん)も感じさせない。車椅子で走る男の背には羽が生えたのだ登りかけの朝日に照らされた男のシルエット。無論シルエットに羽のようなモノは見当たらない。福生の中のもう一人の自分が得たいの知れない何かに共鳴する福生を突き動かすのは落下してゆく女性が綺麗かも?その予感だけに他ならず、目の前の女の自殺が、自分が川に飛込む=死という客観的事実を凌駕する。林檎が木から落ちるように男は橋から女を追って落ちてゆく。その一瞬は永遠のようで福生は落下の最中、頭でこう叫んでいた『時よとまれ、君は美しい』。
男はこの時、もし生きてかえれたら、身を投げた女に恋することを覚悟していたのである。
尚、余談になるが、福生が後に知ることになる、林檎のように落ちていったこの女の名は、奇遇にも峯岸林檎というのである。
男はこの時、もし生きてかえれたら、身を投げた女に恋することを覚悟していたのである。
尚、余談になるが、福生が後に知ることになる、林檎のように落ちていったこの女の名は、奇遇にも峯岸林檎というのである。