七色の空
「もぉ泣かないでつづき3」

京王井の頭線、吉祥寺方面の電車に乗って井の頭公園の池を目指す林檎。電車に揺られる、薄着で虚ろな美人とは、何とも魅力的である。車内の林檎は、流れる外の景色を眺めながら煙草を吸いたいと思っていた。
目的の池には、井の頭公園駅という駅が最寄り駅である。その駅の1つ前の駅が「三鷹台」という。改札をでるとフレッシュネスバーガーがある。余談である。
 林檎を乗せた駅が「三鷹台」に近付き減速をはじめる。反対車線では丁度渋谷行の電車が「三鷹台」で先に停車している。吉祥寺行の電車が「三鷹台」で停車すると、ふとフレッシュネスバーガーでチリビーンズドッグを食べたくなった林檎は、そんなつもりはなかったが、「三鷹台」で電車を降りる。
林檎はしばしフレッシュネスバーガーで時間を過ごし、お腹がふくれると池に行くことがどでもよくなったのか、少し悩んだ後、電車賃ももったいないので、結局引き返すことにする。渋谷方面のホームに間も無く各駅停車が到着する。 その時である、反対車線を通過する吉祥寺行急行電車に福生を見付ける!それは刹那の一瞬、目の前を流れた残像の中にそれだけは確かに目視した。林檎は人並み外れた動体視力の持ち主ではない。スロットで生計をたてていた時代は確かにあるが、回転する胴体の中に2チェを見付けるのとは訳がちがう。
車内に半分預けた体を、物凄いクイックモーションで外へと引き戻すと、三鷹台駅の改札を為末慎治ばりに飛び越えて、林檎は走る、福生の乗った急行電車を追って!
 駅員が叫ぶ、「お客さんッそりゃないよーッ」
余談であるが、林檎は無賃乗車はしていない。
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