七色の空
チャプター32
「バスの揺れ方」

夜行バスが高速道路をひた走る。西へ西へー。
福生は林檎を連れて、生まれ故郷を目指す。故郷に帰っても、実家はない。友達もいない。あるのは幼少期を過ごした市営の孤児施設とノスタルジーだけである。
 福生は彼女を連れて、ただ夜行バスに乗りたかっただけかもしれない。 
福生が初めて上京した時も夜行バスだった。疲れて眠るサラリーマンばかりの車内で、福生は一人、早朝の新宿にバスが着くまでの間、一睡もせずに窓の外を眺めていた。
車内で眠る林檎は可愛い。撮影あけで疲れているのだ。
 福生はまた一睡もできないでいた。
死ぬまでにしたい7のこと。 福生にはもぉそれほど時間が残されていない…
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