七色の空
チャプター33
「パケホーダイ」

福生が携帯の通信料金プランをパケホーダイにかえたのは、出会い系でセフレを探すためだ。しかし、このオトコはセックスの出来る体ではない。じゃあ何フレ?福生は自分に問いかけた。風俗に行けば下半身が役に立たなくとも、それなりに楽しむことはできる。きっと福生はそゆことをしたかったのだろう。
ノスタルジーな故郷でも東京のセフレ候補からメールは届く。福生は、「いま田舎にいます」などと、全く相手の求めていない返事を返す。出会い系のセフレとは、ソフトバンクのタダ友のようにセフレ間、通話料無料という訳にはいかない。彼女たちは、明日を乗り切るお金の為に、携帯のボタンを押し、アソコのボタンを押されているのだ。 そもそも料金が発生している時点でセフレではない、只の援助交際である。
福生は故郷のドコモショップでパケホーダイを解約した。
店員は言った、「今おやめにならはっても定額料金頂くことになってしまうんで、今月末にやめはるんをお勧めしますが?」
福生は答えた、「今日で構いません」
林檎はいつもそばにいる。携帯が必要なのは仕事の用事だけだ。メールは使わない。インターネットはパソコンがある。一度も会うことのなかったセフレの為のパケホーダイは、今日でおわりだ。
その日、ドコモショップで福生のパケホーダイ解約を担当した窓口のお姉さんは、よく見ると孤児施設時代の同級生だった。福生の出ていったこの町で、立派に社会人としてやっている。
彼女が関西弁で話すから、少し福生にもうつった。 本来、DoCoMoの看板をしょった窓口担当者たる者は、関西圏であろうが、接客時の基本は共通語、それがダメなら、せめてイントネーションが関西訛りの共通語を期待したいところだ。けれど、関西弁丸出しの彼女の接客は、福生を少し懐かしい気持ちにさせた。
余談になるが、関西人のラブレターは関西弁で書かれるのである。「福生のことめっちゃ好きやで!ハート」といった具合にね! 福生の話すイントネーションのおかしな東京弁を聞いて林檎が笑う、とても嬉しそうに…。
福生は彼女の名前を思い出せなかったが、心のなかで「がんばって」と呟いた。
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