七色の空
チャプター34
「ユリイカ」
「生きろとは言わん、ばってん死なんでくれ」青山真治監督 『ユリイカ』の中の台詞である。
福生はこれ以上、故郷にいても仕方がないことが分かった。
夏草の生い茂る線路脇。林檎が車椅子の福生をおして、なだらかな坂を下って行く。二人の横をローカル電車が通り過ぎようとしている。
坂の上の二人を蜃気楼がぼかす。
さっきまで二人は福生の捨てられた、湖畔の病院にいた。
母親は福生を捨てる場所に病院を選んだ。最後に母親が、なけなしの優しさをはたいたのかも知れない。
福生の母親は、どうしようもない男を愛し、愛した男と子をもうけた。子供は障害を持って生まれてきた。それが原因で離婚となり、罪のない子供は捨てられた。よくある話である。
線路脇の夏草は、充分に陽を浴びて、空に向かって生い茂る。
車椅子を押しながら、林檎の見つめる福生の背中は切なくて、林檎は涙がこみあげる。
二人の横を通過する電車の騒音に隠れて、林檎は泣いた。
電車が通過したあと、福生が告げた、
「おれ、もぉこの先ながくない」
ゆるやかな坂道の上で、二人はしばらくの間、取り残される。
二人の姿が蜃気楼に溶けてゆく。
「ユリイカ」
「生きろとは言わん、ばってん死なんでくれ」青山真治監督 『ユリイカ』の中の台詞である。
福生はこれ以上、故郷にいても仕方がないことが分かった。
夏草の生い茂る線路脇。林檎が車椅子の福生をおして、なだらかな坂を下って行く。二人の横をローカル電車が通り過ぎようとしている。
坂の上の二人を蜃気楼がぼかす。
さっきまで二人は福生の捨てられた、湖畔の病院にいた。
母親は福生を捨てる場所に病院を選んだ。最後に母親が、なけなしの優しさをはたいたのかも知れない。
福生の母親は、どうしようもない男を愛し、愛した男と子をもうけた。子供は障害を持って生まれてきた。それが原因で離婚となり、罪のない子供は捨てられた。よくある話である。
線路脇の夏草は、充分に陽を浴びて、空に向かって生い茂る。
車椅子を押しながら、林檎の見つめる福生の背中は切なくて、林檎は涙がこみあげる。
二人の横を通過する電車の騒音に隠れて、林檎は泣いた。
電車が通過したあと、福生が告げた、
「おれ、もぉこの先ながくない」
ゆるやかな坂道の上で、二人はしばらくの間、取り残される。
二人の姿が蜃気楼に溶けてゆく。