七色の空
チャプター35
「Seven stars」

林檎は以前、二人の部屋で見つけたメモは、福生の脚本のアイデアを書き留めたものだと思っていた。そぉ思いたかった。今も林檎は福生が言った事を信じていない。
福生は病院の診察室に、いつものように予約時間を守って到着する。時間と童貞は守ってみせる。そぉ心に誓うことで今まで童貞の自分を肯定してきた。
主治医の淳は、福生が診察室に訪れる時だけ、ナースを閉め出し、煙草を吸った。福生と淳の男どうしの秘密である。診察のあとにファブリーズで今までバレたことはない。福生は林檎と故郷に帰ったことを話した。淳は仕事の愚痴とナースとの色恋沙汰である。
福生「先生」
淳 「何でしょう?」
福生「僕はもうすぐいなくなるんですね?」
淳 「…」
窓から見える街の風景は、初めてここに訪れた時頃から何も変わらない。沈黙のあと、
淳 「謹んで申しあげる。…君がこの先、奇跡的な回復をみせる可能性は、今の医学の力では微塵もないよ」
福生「先生」
淳 「?」
福生「もぉ同じ質問は二度としないと誓います」
淳 「…」
福生「今日の煙草は一段とうまい(笑)」
煙草の煙が天井に漂っている。
二人は同じ銘柄の煙草を吸っている。7つの星★。福生には、やらなければならないことが、あと5つ残っている。
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