七色の空
チャプター47
「触って 笑って」

都会と田舎で暮らすのとでは寿命に違いがあるのだろうか?少なくとも都会のマックと田舎のマックとでは、同単位時間当たりに吸い込む副流煙の料が違う。 二人には煙草が不可欠である。吸わないで暮らしていける、大半の日本国民の気持ちが分からないでいた。煙草は百害あって一利なし、二人はそれを知っている。 
 では、何故辞めないのか?自分達が世の中の害であると、幼い頃から認めてきたからである。他人に対して、害でありながら暮らしてきたこれまでを、懐かしく振り返りながら煙草に火をつける。これからも幸せそうな世の中と、疑問を抱くことなく付き合っていけそうな気はしない。考えすぎる未熟な心は、煙草の煙で誤魔化してしまおう。
福生を連れて、林檎は病院をあとにした。車の中で運転する林檎の手を福生が触ると、林檎が笑った。
今日、林檎はレンタカーを借りて、退院する福生を迎えに来た。これから賑やかな街へドライウ゛に出かける。 
今日は日曜日、昨日喫煙所で見た老人が、「笑点」の始まる時刻に亡くなった。
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