BABY BLUE(短編)
「……あたし、本当に似合わないから。青が一番落ち着くの。ピンクってさ、いかにも女の子って感じだからずっと避けてたんだ。
雑誌でピンク特集がされてる度に、あたしもこんな色が着られたらなぁって思ったことはあったよ?でも……また否定されたらって思うと、凄く怖い。」



 正真正銘のトラウマ状態。もう、あんな思いはしたくない。唇を噛み締めるあたしに、京花は不安そうな目を向け続けていた。天井に取り付けられたファンが、ゆっくりと回っている。やがて京花は、静かに口を開いた。



「……ピンク、似合うと思うけどなぁ。無理に勧める訳じゃないけど、竹田君に可愛いと思われたいって、真子も思ってるんじゃない?」



 ──解けなかったなぞなぞが、ようやく解けた感覚。そうか、違和感の正体はこれだったのか。竹田に「クールだ」と言われるだけじゃ嫌だったのは、奴に女の子扱いして欲しかったからなんだ。

 だけど、こないだ「青って良いよな」と言われたことが嬉しかったし、今更ピンクを身に付けるのも気が引けるし……どうしたものか。困って京花を見ると、「若い内は冒険だよ!」と極上の笑みを向けられた。

 ──やってみなきゃ分かんない、ってことね。
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