BABY BLUE(短編)
 学校までの道のりは、まるでお化け屋敷だった。いつ何処で誰に遭遇するか分からないという、スリル満点すぎるひととき。今日は晴れで、隠れることができる傘すらない。同級生らしき人を見かける度にコソコソしてしまう自分を、心の奥で嘲笑した。



「……今日でバイバイするって決めたじゃん!」



 頑張れよ、あたし。教室に入る時は、もっと酷い緊張感が襲ってくるんだ。ここで逃げたら、きっとあたしは自分のことを、一生“チキン”と罵るだろう。

 深呼吸を、一つ。気持ちを切り替えて、歩み始める。そこから今日が変わり始める。今日から何かが変わり始めるんだ。

 ──遂に、教室のドアの前まで来た。廊下ですれ違った同級生達の、謎めいた視線にも耐えてきた。これで教室に入れば、誰もあたしをチキンだなんて呼べまい。

 あれ、足が動かない。おかしいな……思った以上に緊張しているらしい。激しい鼓動と緊張が、全身を震わせていた。

 その内、後ろに人の気配がした。思わず振り返ってしまって、後悔。あぁ……今は会いたくなかったよ。本当に心の準備ってやつをさせてくれないんだな、この人は。
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