BABY BLUE(短編)
「おはよー、何突っ立ってんだ……って、仁科!?びっくりしたぁ!!」

「た、竹田……」



 10センチ程見上げる辺り、超至近距離に竹田の顔。そんなに近付かないでよ、なんて言う暇もなく、竹田の声に驚いたクラスメイト達が、何だ何だとこっちに注目する。しばらくして一人の男子から、「おーっ!何か仁科が珍しいぞ!!」と宴会席を盛り上げるような声が上がった。

 みんなの焦点があたしに合わされる。嫌だ……何を言われるんだろ。両手に思わず力が入る。すると何処からか、優しいトーンが聞こえた。



「……似合ってるよ!ね、みんな?」



 京花だった。彼女に続いて、みんなから口々に言葉が溢れる。



「何か意外だけど、似合ってるよね!」

「びっくりしたなぁ、もう。可愛いじゃん、真子!」

「へー……仁科って青以外の色も身に付けるんだ……」



 向けられた笑顔はどれも好意的で、思わず涙腺が緩みそうになる。でも、問題は背後の人の表情だ。



「竹田……変、かな……?」



 奴は押し黙っていたけど、やがて口を開く。全神経が、それに集中した。



「似合ってない訳じゃないけど……変、かな……」



 ──終わっ、た。
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