BABY BLUE(短編)
 何がどうしてそうなったのかは覚えていない。気付いたら、来た道を逆戻りしていた。家に飛び帰れば、驚いているお母さんを無視して自室への階段を駆け上がる。勢いよく閉まるドアの音が、ストッパーが破壊する合図だった。

 一番認めて欲しかった人に、変だと言われた。今のあたしの心は、ノックダウンさせられたボクサーよりもズタズタに引き裂かれているだろう。万人が受け入れてくれる筈ないって、分かってたんだけどな。だけど、大好きな人から言われると、想像していたよりも、遥かに辛くて苦しかった。



「ハハハ……やっぱあたしには、ピンクは似合わないんだ……」



 これではっきりしたじゃない。京花やみんなの言葉がお世辞だったってことが。あたしはクールに生きろってことなのね。可愛さを求めちゃいけないってこと、か。

 ――良いよ、もう。今日はベッドと枕がお友達だよ。濡らしてごめんね、なんて心の中で謝ってみても、何も返してはくれないけどね。



「……正面きって言われると、結構キツいな……」



 こぼれる苦笑と雫が止まらない。布団にもぐっても、「変」だと言ったあいつの寂しそうな顔が浮かんできた。振り払っても、何度も、何度も……
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