Which one?
「俺はあいつみたいに、四六時中笑顔振りまいたりは出来ないけど」
そう思ったのが一秒前。
今は、布川さんがいつもと同じだなんて思う余裕なんかない。
――だって、布川さんの広くて温かい腕が、私を抱き留めてる。
「こういう時くらいは、してやれると思ってる」
コツンと頭に顎を軽く乗せられ、回されていた腕に少し力を入れられる。
ふわりと包まれた感覚に、冷え始めていたはずの全身が熱くなった。
「頑張ってる橘を、俺がこうしてあっためてやるから」
頭上から降り注ぐ声は、ものすごく優しい。
なにも発せずに、知らぬ間に息を止め、その穏やかな温もりを身体で感じていた。
「だから、また明日も元気に出社してこい」
コン!と、大きな音を立ててココアが床に落ち、転がった。
その音に我に返った私は、布川さんに後ろから抱き留められたままの状態でどうにか返事を返す。
「……はい」
しばらく、その人肌の温もりに心を寄せて……。
*
「おはようございます」
「美里さーん! おはようございますっ」
翌朝も、変わらぬ光景と変わらない応酬。
「だから、呼び方!」
「だって、『美里』って可愛いんですもん」
現金だ。昨日の夜は静かな温かさに身を委ね、翌朝になったら太陽のような彼の笑顔にホッとするなんて。
「おはよう。橘」
「あ……布川さん。おはようございます」
「今日も、頑張ろうな」
一瞬だけ見せてくれた微笑みに、昨夜のことを思い出しては、また身体に熱が灯る。
……ふたりに同じように癒されてるなんて、自分でも信じ難いし狡いってわかってる。
だけど、私の一日は、今日もふたりの温かさを感じるばかりだ。
*おわり*
紺野=(不特定多数を暖かくしてくれる)エアコン
布川=(その人のみを包むように暖かくしてくれる)ブランケット
そう思ったのが一秒前。
今は、布川さんがいつもと同じだなんて思う余裕なんかない。
――だって、布川さんの広くて温かい腕が、私を抱き留めてる。
「こういう時くらいは、してやれると思ってる」
コツンと頭に顎を軽く乗せられ、回されていた腕に少し力を入れられる。
ふわりと包まれた感覚に、冷え始めていたはずの全身が熱くなった。
「頑張ってる橘を、俺がこうしてあっためてやるから」
頭上から降り注ぐ声は、ものすごく優しい。
なにも発せずに、知らぬ間に息を止め、その穏やかな温もりを身体で感じていた。
「だから、また明日も元気に出社してこい」
コン!と、大きな音を立ててココアが床に落ち、転がった。
その音に我に返った私は、布川さんに後ろから抱き留められたままの状態でどうにか返事を返す。
「……はい」
しばらく、その人肌の温もりに心を寄せて……。
*
「おはようございます」
「美里さーん! おはようございますっ」
翌朝も、変わらぬ光景と変わらない応酬。
「だから、呼び方!」
「だって、『美里』って可愛いんですもん」
現金だ。昨日の夜は静かな温かさに身を委ね、翌朝になったら太陽のような彼の笑顔にホッとするなんて。
「おはよう。橘」
「あ……布川さん。おはようございます」
「今日も、頑張ろうな」
一瞬だけ見せてくれた微笑みに、昨夜のことを思い出しては、また身体に熱が灯る。
……ふたりに同じように癒されてるなんて、自分でも信じ難いし狡いってわかってる。
だけど、私の一日は、今日もふたりの温かさを感じるばかりだ。
*おわり*
紺野=(不特定多数を暖かくしてくれる)エアコン
布川=(その人のみを包むように暖かくしてくれる)ブランケット