惑わす誘惑。
「...楓がこの会社で唯一安らげるのは、俺のところだ。違うか?」
「...そんなこと」
否定し続ける私に、彼は大袈裟な溜め息を吐き出すと、距離をぐっと縮め、私の耳元で囁いた。
「...俺じゃなきゃ、お前を満足させられない。お前は俺じゃなきゃダメなんだよ。」
そう言われて私を縛っていた何かが、音をたてて壊れた気がした。
私はポーチの奥にはいっていた"煙草"を取り出すと、ひとつを手にとり、火をつけた。
"ジッ"と火の点く微かな音と同時に彼は、また意地悪く微笑んだ。その顔は何よりも綺麗だ。
「.....あぁ~やってしまった」
私は煙と共にそんな言葉を吐き出した。
__私の禁煙生活は幕を下ろしたのだった
*end*
優しい [ 休憩室 ]
意地悪な [ 喫煙室 ]
( どちらも会社にありますかね? )