拾われサンタ、恋をする
上着を脱いで、置場所に悩んだところでダイニングの椅子の背もたれに引っかけた。
そして自分もその椅子に座る。
「どうぞ」
目の前に置かれたカップから、湯気といい香りが上がってくる。
「ジンジャーティーです。体が温まりますよ」
「いただきます」
冷えきった手には、カップを持つだけでじわっと温もりが広がった。
が、湯気が眼鏡を曇らせる。
冷める前に飲みたかったこともあり、僕は早々に眼鏡を諦めて横に置いた。
「お口に合いますか?」
「美味しいです。正直、ほんっとに寒かったんです」
「昼に少し雪が降ったくらいですからね。ずっと外にいたら体が痛くなりそう」
言いながら、女性はお皿にクッキーを並べたものと、自分の飲み物とを持ってきて、前の席に座した。
実家の母親とご飯を食べるときを思い出してしまう。
「……何か可笑しかったですか?」
口許が緩んだらしく、気づいた女性が訊ねてきた。
「いえ、その、懐かしい感覚があったものでつい。振られたその日に、彼女の隣のお宅で暖をとらせてもらってる状況もマヌケですね」
「そんなことは……彼女さん、突然だったんですか?つらいですね」
「実はもう大分前から冷めていて、そこまで落ち込んではないですよ。けどまあ、ショックはありますね」
笑って誤魔化そうとする僕に、女性はしんみりした顔で頷いた。
「分かります。関わりのある人が突然いなくなるのって、相手が誰であっても気持ちが塞ぐものだと思います」