拾われサンタ、恋をする
「ああ!俺それ知ってる!あははは!意外とふざけたことすんだなー、理系男子」
快活な遠藤くんの反応に救われる。
この手の冗談は通じてくれた方がいい。
「なになに?どんなヤツ?」
「ごめん小田さん、女子なら分からなくて正解だから」
「スケベな話か」
「ずばっとくるよね……」
確か小田さんは男兄弟の中で育ったんだっけ。
亜紀さんだったら意味を汲んでくれずに、根掘り葉掘り訊きたがりそうだ。
そんなことを考えたら、一人噴き出しそうになった。
「あー!南くんがやらしいこと連想してる!」
「え、違うよ」
「馬鹿だなー小田。男がそういう笑い方する時ってのは、大抵好きな女の言動思い出して勝手に萌えてんだよ。だよなあ?南」
「いやいや、僕が思い出したのは………」
流し目でニヤリと笑いながら名指しで問われたが、なぜか言葉に詰まった。
確かに思い出し笑いと言えばそうだけど。
僕が思ったのは亜紀さんであって、あの人は恋人でもなんでも――――ない、はず……
「………あれ?」
自分の中の認識がぶれ始めたのを感じて妙な焦りが沸いてくる。
僕は亜紀さんのことを、この二人にどう伝えるつもりだったのだろう。
お世話になっている教授の娘さん?
優衣ちゃんという知り合いの女の子のお母さん?
当たり障りのない言葉を見つけようとするのに、頭の中に亜紀さんの泣き顔やほわんとした笑顔が浮かんでくる。
恥ずかしそうに俯いた時の顔とか。
「どうしたんだよ。顔が真剣すぎて怖いぞ」
「南くん?」
ハっと我に返った時、二人は本気で心配したようで僕を覗きこんでいた。
「あ……ううん。大丈夫。……最近知り合った女の人が面白い人でね。その手の話には鈍いだろうなーって思ったら、つい」
遠藤くんは「ふーん」と相槌を打って、枝豆を口に放り込んだ。
「んで、南はその人と微妙な関係ってわけ?」
「まさか!微妙も何も、そういう対象の人ではないよ。もうお子さんもいらっしゃるしね」