拾われサンタ、恋をする
「なんだー子育てママさんか。東京に来て初めて南くんの恋バナ聞けるのかと思って期待したじゃん!」
「俺も俺も!」
二人が一気に話を流す雰囲気になったことで、ほっとするかと思いきや、僕の胸はチクリと痛んだ。
どうなってんだよ僕は、ややこしいな。
亜紀さんとの関係を恋愛方面に持って行って欲しくないくせに、完全に対象外として扱われるのは悲しいってことか。
「けどさー私は人のこと言えないわ。今追っかけてる人、十歳上のバツイチ子持ちだもん」
小田さんがガリっと氷を噛み砕いて、そんなことを暴露した。
「いいじゃん。不倫じゃねーし」
「そうだけどさ、全く相手にされないで悲しいばっか。しかも下手にモテるもんだから、私みたいな下っ端が割り込んでいけない雰囲気なのよね」
「子持ちでもモテる奴はモテるんだよなあ……」
「ほんとにね。さんざん大人の付き合いってのを見せつけられるだけの日々よ。あーあ、私もさっさと未来ある付き合いができる人見つけたい」
漬物三種盛りに手を出しながら恋愛を語る小田さんは、女と親父が共存している気がする。
おかげで隣に座っていながらも、気を遣わずに済んでいい。
「あのさ、未来のある人ってどんな人のこと?」
引っかかったワードを訊ねてみたら、肩頬にきゅうりを入れた状態の小田さんが若干驚いた顔をした。
「私たちの年で相手探すなら、まずは初婚同士になるじゃん」
「俺的には子供の有る無しってのがデカイけどなあ」
二人の意見を聞いて、逆に僕が驚いて目が丸くなる。
「そこを問題にしてたら、世の中から再婚できる人がいなくならない?僕はあんまり気にならないけど」
「は?」
「ちょっと、ちょっと!南くん!」
ぽかんとした顔をする遠藤くんと異なって、小田さんがいきなり僕の話に食いついてきた。
「さっきのママさんの話、やっぱりリアルな恋愛絡んでるでしょ」
「……彼女のことを蒸し返す必要あるの?」
「あるよ。南くん、自分で気付いてないかもしれないけど、目の色変わってるよ」