拾われサンタ、恋をする
気付かない所を指摘されて、おもわず目が泳いだ。
僕は一呼吸する間に冷静になれと自分で言い聞かせる。
「知り合いだし心配はするけど、そういう関係じゃない。ほんとに」
「じゃあ何にカッカしてんの」
「別にカッカしたりしてな――――」
「うっさい!私がしてるっつったら、してるんだよ!」
……そ、そんな横暴な!
どこまでも食い下がる小田さんに、僕はとにかく狼狽えるばかりだ。
「こら小田、落ち着け。誕生日祝った相手を脅してどうするんだ」
「アンタもうるさい!私はこういう煮え切らない感じが嫌なの!」
「お前が嫌がってもどうにもなんねーじゃん。南がコレなんだから」
コレってどういう意味だろう……と、そこは質問しづらい空気を読んでとりあえず黙ったまま二人を交互に見てみた。
やがて小田さんが大げさなくらいのため息をついた。
「……トイレ行って流してくる。そのあともう一回飲み直す」
「小田。具体的で分かりやすいが、もう一声だな。出すのは上からか?下からか?」
「おもに下」
「なら一人で行って来い」
小田さんは店のスリッパを履いてフラフラと歩いて行き、しばらく戻ってくる気配はない。
よし、鬼の居ぬ間になんとやらだ。
「遠藤くん、席替えして。あの人戻ってきたら僕は絶対殴られる」
「やだよ。南が変なこと言うから機嫌悪くなったんだろ。小田みたいな奴は曲がったことが嫌いなんだから、筋通して喋ってやらないと」
「小田さんが勝手に深読みして僕に怒ってるだけだと思う……」
「そおかー?」
遠藤くんは枝豆をしがしがと噛んで食べながら、疑いの眼差しで僕を見た。
「その女の人が南にとって特別なんだろうなってのは、俺にも分かるけど?」
「………なんでそっちに持ってくの」
僕としては、紗理奈との関係が終わったことでずっとモヤモヤしていた気分に区切りをつけたのだ。
今は余所見をせずに、しっかり勉強と向き合うぞという気持ちでいる。
亜紀さんや優衣ちゃんに対する心配はあれど、何も僕自身の生活に影響するものではない。