拾われサンタ、恋をする
「決まり、日程調整して連絡して」
「どうなっても文句言わないでね」
「それは成り行きだから約束できない」
ああ殴られる、今日無事に帰っても絶対いつかこの人に殴られる。
「小田さんって高校の頃、何の部活入ってたんだっけ?」
「剣道部」
「……そうなんだ」
武器持つタイプ!
僕の顔が引きつったのを察知して、前に座る遠藤くんが机に突っ伏して笑っている。
「腹いてえ!どんだけ怖がってんだよー南!」
「怖いよ普通に!ここに座ってみたらわかるよ!」
「失礼でしょあんたたち!これから新たな恋を始めようっていう女子に向かって!」
そこで声を荒げるあたりがね……というのは口にしない。
恋人探しのために、この人がどこまで猫を被るのかを見てみたいような気もする。
「ごめんごめん、小田さんは(黙ってたら)綺麗だよ。服装もお洒落だしね。(武器持ってない時に)甘えたい男もいるんじゃないかな」
「褒めてるんだったら、どうして所々間が空くわけ?」
「いやあ、ははは……」
危なかった、墓穴を掘るなら矛先を変えよう。
「とりあえず先輩に話してみるよ。ただちょっとチャランポランな所がある人だから、小田さんに喝を入れてもらえたらと思う」
「そいつに会った時にヤキ入れてやればいいの?」
「小田さん……合コンって果し合いじゃないから」
「あっはっはっは!」
僕らの話を聞きながら、涙を浮かべて笑っていた遠藤くんが、実は酔っぱらっていたと気付くのが遅くなった。
同郷の友といえども、初めての飲み会は反省の方が記憶に残ってしまった。
「ちゃんと送ったよ。まさか。知らないけど遠藤くんの会社の人に連絡して聞いた。うん、うん。僕はこの通り全く普通」
遠藤くんの家を探して送り届けてから、ようやく自分のマンションに戻ることができた。
先に帰った小田さんが、心配して電話をくれた。
僕はそれに対応しながら、明るさの足りてない通路を歩いていた。