拾われサンタ、恋をする
「僕に?」
「はい。優衣とチョコを用意してたんです。お留守なら別の日に渡そうと思ったんですけど、父が今日は南くんの誕生日だって言うから」
だからこんなに遅くまで……
半ば呆然としながら紙袋を受けとると、その大きさでチョコレートだけではない何かであることはすぐにわかる。
「よしひろ君、おめでとー」
優衣ちゃんが小さな手をパチパチと叩きながら言った。
この子にとっては就寝していてもいい時間なのに、頑張って待っていてくれたのか。
そう思うだけで、今すぐぎゅうぎゅう抱きしめたくなる。
「どうもありがとう。嬉しいよ」
お礼を言うと、優衣ちゃんはくすぐったそうに笑う。
「優衣、ピンクがいいって言ったのに、ママが黒にしたの」
「ん?」
「それー」
紙袋を指しているからには、この中身の話をしているらしいが、僕はすぐに察することができなかった。
フォローを求めて亜紀さんに顔を向けたら、クスクスと眉を下げて笑っている。
「セーターのことです。優衣の希望を聞いてあげたかったんですけど、ショッキングピンクは似合わないんじゃないかと思って黒に」
「………」
似合う、似合わないの問題ではない。
メガネを掛けて、どピンクのセーターを着たら……僕の顔が真面目な分、おそらくただのハレンチ野郎に───
「ピンクは優衣ちゃんの方が似合いそうだね」
「優衣ピンク好き!」
「そっか」
明るい声と明るい笑顔。
これが何よりの贈り物だ。
僕はそばにいた優衣ちゃんをヒョイと抱えた。
今このとき、十分特別じゃないかと言われた言葉に、正々堂々と立ち向かいたい気分になった。
「お月さま!お月さま!」
腕の中で空を見せてとせがむ、この子は確かに特別だ。
「しばらく続きそうですね、優衣のこれ」
隣に立って一緒に月を眺めたあと、亜紀さんが笑いながらそう言った。