拾われサンタ、恋をする
とは言え
「えっと、あれ?」
待てども待てども……
そんな小さなカバンから探し当てるのに、どうして出来ないんだろう。
その内にやっぱりというか、関係のないポケットティッシュがパサリと落ちてきたりする。
僕が屈んでそれを拾うことでもちろん謝罪も受けるわけだが、さてどの辺りで助け船を出せばいいのかと迷ってしまった。
「亜紀さん、ちょっと端に寄りましょうか」
彼女の肘に手を添えてさりげなく隅に誘導してみた時だろうか。
「あ!ありました!」
亜紀さんから歓呼の声があがり、僕の方がほっとする。
嬉しそうに僕にそのメモ紙を見せてくれて、そこには僕が事前に調べておいた店名と電話番号、手書きの地図が書いてあった。
地図が大雑把であることには強いて触れない。
亜紀さんは調べておきながら、実際の行き方までは自信がないらしい。
「これで分かりますか」
「なんとなくは」
正直、亜紀さんのメモの情報は全く頼りにしていないけれど。
僕の気のない返事に嬉しそうにする亜紀さんを見て、気付けば小さく笑いを溢していた。
「南くん?」
「いえ、これひとつにそんなにエネルギー使うんだなと思うと」
「……絶対馬鹿にしてますね」
「まさか」
気恥ずかしくなったのか、フイと横を向いた亜紀さんの顔を見た途端、犬に「よしよーし!」する勢いで頭をわしゃわしゃ撫でたくなったがこらえた。
本気でドン引きされてこの後気まずく過ごすか、かつてない劇怒りを見せられるかの二択なんて回避だ。
僕が絶対しないような健気な行動が単純に可愛いと思ったんですよ、と。
言おうとして、これもまたこらえた。
亜紀さんからすれば、僕にそんな言葉をもらっても迷惑でしかないだろう。
警戒されて距離を置かれる方がつらい。
買い物に付き合ってくれるような、気が置けない間柄になれたことを大切に時間を過ごそう。
その内にサンタ枠から卒業させてもらえたら万々歳だ。