拾われサンタ、恋をする
「……はい?」
女性の間の抜けた声でハッと我に帰る。
やばい!なんだ今のナンパなセリフは!
「失言でした!すみません!」
僕は慌てて立ち上がって頭を下げた。
気まずいまま固まっていたら、前から笑いを堪えているような声が聞こえる。
「落ち込んでいる人が口走ったことくらい、ちゃんと流せますよ……っ そんな真面目に謝らなくても」
「僕はそういう性分なんです……」
だって男なんだから、女性に変態扱いされるよりは、スマートな紳士でいたいじゃないか。
必死すぎて怖がられる?この辺がもてない要因だろうか。
「真面目な学生さんなんですね」
涙の滲んだ目尻を指で拭って、そう言われた。
泣くほど笑わなくても……
どうにも否定する術がなく、少し温度が下がったジンジャーティーを一息に飲んだ。
きっと耳まで真っ赤だろう。
「ごちそうさまでした」
トレードマークの眼鏡をかけて、そろそろ帰ろうというアピールをする。
「少しは温まりました?」
「はい、大分動きやすくなりました。家まで体温保てそうです」
それはよかった、と言って女性は僕が上着を着るのをそっと手伝ってくれた。
さすが大人の女性だ………などと感動するくらい、頭も動き始めている。
「そうだ、帰る前にこれ」
僕はリビングで存在感を主張しているクマを指差した。
「せっかくなので、僕が娘さんの枕元に置いてもかまいませんか?」
「……いいんですか?けっこうハードル高いですよ」
それは、子供を起こさないようにミッションを成功させるのが、という意味だろう。