拾われサンタ、恋をする
「……大丈夫です。必ず成功させてみせます」
「ではサンタさん、よろしくお願いします」
先導して歩く女性の後ろを、包装紙が壁に当たらないように注意しながら、クマを抱えてついていく。
ここ、と教えられた部屋のドアノブも、数秒かけてソロリと回した。
豆球の灯りの中、ベッドで寝息をたてている小さな女の子。
枕元に置くにはサイズ的に難しいため、ベッドの隣に静かにそれをセットする。
……起きてないよな?
確認のために覗いて見た女の子の寝顔は、小さくてなんとも言えない可愛さだ。
しばらく目が離せなかった。
そのくらい子供の寝顔が可愛かった。
でも今の僕は夢を運ぶサンタだ。
名残惜しくとも、子供を起こさないようにこの部屋から脱出するところまでがミッションである。
僕はまた足音を忍ばせて部屋を出て行き、開けたときの倍の時間を費やしてドアを閉めた。
「どうでした?」
ひそひそ声で訊いてきた女性に、親指を一本立てて見せると、拍手をする真似を返された。
「素晴らしい早業でしたね。私なんて去年、夜中の二時までかかったんですよ」
「はあ、どうも」
サンタの妙技を褒められ、お礼を言っていいのやら、とにかく複雑な気分だ。
「今日は何から何までありがとうございました。ええと、サンタさん」
やめてくれ。
「……南といいます。南義大」
「サンタの南さん」
あんまり代わり映えしない呼び名に、靴を履こうとする足から力が抜けた。