拾われサンタ、恋をする


「お前らさぁ、そろそろ空気読んだら?義大はこれでも落ち込んでんだぞ。いきなりフリーになって」


「えええええーー!」


「あんなに尽くしてたのに何故このタイミングで!」


クマ先輩が騒ぎ立てる奴らを纏めようとしてくれている―――のに、しぃっていいながら何でにやけてるんだよ。


「南先輩の彼女さん。言っちゃなんですけど、派手目な子でしたよね」


「あー学祭来てたよなぁ!あの時匂いも女オンナしてたし、服装もこう、女ー!って感じ?女の格好きつめだから、女の武器使える場所行ってんじゃないかって」


「大西くん」


クマ先輩が行き過ぎた会話を遮るために、低い一声を出す。


「ちょっと女女言い過ぎ」


……つっこみどころは絶対そこじゃないはずですが?


「まー、詳しい事情は聞かねえけど、将来の義大の稼ぎ食い潰しそうな彼女なんて、振ってやって正解だよ。お前よくやったって」


「わお!南先輩から振ったんだ!」


「……うん、一応」


「おおー!かっけぇ!」


「先輩ありがとうございます!俺らのことを生物オタクって見下すような女に、一矢を報いてやった気分ですよ!」


チクチクチクチク、良心がイタイ。


だけど何とか、バカにされたままで話が終わる方向は回避できそうだ。


僕の黒髪は撫で回されて、あっという間にボサボサになった。


理系サイコー!オタク万歳!なんて盛り上がっていた奴らも、ようやく作業を始める準備にかかりだした。


卒論だってかかってるわけで、研究に対しては真面目な連中だ。


本格的な実験が始まる前にトイレ行っとこう。


そう思って席を立った時だった。


「皆さん、おはよーさん。ん?南久しぶりだなぁ。どっか行くのか?」


「おはようございます、須藤教授。ちょっとトイレに――――……」


会話の途中で、先生の後ろにいた女性の姿を見て面食らった。


――――神様


なぜ一部始終を知るこの人を、ここへ遣わせたのですか。


……賽銭に万札ご希望ですか。


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