拾われサンタ、恋をする


「サンタさん!」


待って、そんな花が咲いたような笑顔で、僕のことをそう呼ぶのやめてってば。


「……南です」


「そうでした、南くん。ごめんなさい思わず」


肩を竦めて見せた亜紀さんが、やがてにまぁっと破顔する。


「ふふ……!さっき、面白かったですね!もう私どんな顔したらいいのか、内心焦ってましたよ」


「驚きました。須藤教授の娘さんだったんですね」


「そうなんです。まさか南くんが父の大学の学生さんだとは思ってもなかったです」


柔らかそうな髪が亜紀さんの笑いにつられて揺れている。


下ろしているせいか、前に会ったときよりも若く見えた。


「それ、部屋まで運ぶんですよね。代わります」


僕は返事を待たずに、彼女の手から掃除機を奪い取った。


「お願いします」


亜紀さんは素直に僕に任せて、隣を歩いてくれる。


教授室の外の廊下は、さながらホテルのようだ。


高級感があるという訳ではない。


小さい部屋を詰め込んであるため、ドアの数が多すぎるのだ。


ここ数年出入りさせてもらっている部屋なので
、僕はすんなりたどり着くけれど


「ちょっ……亜紀さん、ここですよ!どこまで行くんですか!」


「はい?ああスミマセン抜かしてしまって」


「そうじゃなくて、須藤教授の部屋はこれ」


部屋番号を確認した亜紀さんの頬が朱に染まる。


「私ったらまた!よかった南くんが連れてきてくれて。前に掃除に来たときは何ヵ所も間違えて開けてしまったんです」


「……札、見てから開けましょうよ」


さすがにテヘペロ付きではなかったが、そのくらいして誤魔化してもキャラ的に許されそうな人だ。


年上の女性で、一児の母で。


それだけ並べると自分よりずっと大人だと思ってしまうけれど、中身を知っていくと同じ世代の女の子と変わらない気がする。


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