拾われサンタ、恋をする
「うわー壮観。これが年末なのね」
部屋に入ったとたん、亜紀さんが教授の部屋の状態をそんな風に言った。
そして早速ゴミを集め始める、その辺りの手慣れた感じがすごく主婦っぽい。
さあ、僕はここに来て、自分の身の振り方をどうすればいいのか。
なんだか一緒に大掃除はじめましょう、みたいな流れになってる気がする。
この機会を逃したら、この人とはもう話せないかもしれない、そう思ったから追いかけて来たのだ。
僕はひとつ大きく息を吸って、それを全部声に変えた。
「亜紀さん」
「わ、びっくりした、はい?」
「この前のことなんですけど。あの、クリスマスの夜。親切にしてくださってありがとうございました」
「どうしたんですか、改まって」
「あの時、亜紀さんに家にって言ってもらえなかったら、僕はきっと立ち止まったままでした。話を聞いてもらってなかったら、すごく自分を責めていたと思います。だから……」
首だけ振り返った状態だった彼女が、話の途中から体ごとこちらに向き直ってくれた。
たぶん僕が相当、切羽詰まった顔をしていたからだろう。
「偶然でも会えてよかったです。一言お礼がいいたくて。ありがとうございました」
すると亜紀さんは、少し慌てたように首を横に降った。
「頭を上げてください。そんなに正直に気持ちを提示されたら、私も謝らなきゃいけないじゃないですか」
「……どうして?」
「だって……私はあの場で南くんが傷ついた瞬間に立ち合ったのに。娘のためとはいえ、貴方を利用するようなことをしてしまったんですよ」
「……もしかしてクマですか」
「そうです」
ごめんなさい、と言いながらくしゅんと落ち込む表情が胸に刺さった。
「娘さん、優衣ちゃん。次の日どうでしたか?……喜んでくれました?」
「もちろん!」
「僕が運んだこと、ばれてませんでした?」
「そこもバッチリでしたよ!さすがサンタさんは一味違いますね!」
その扱いはやめてってば。
「本人に確かめてみますか」
「は?」
「来てるんです、優衣。病み上がりなので今日は保育園お休みしてて。保育科の学生さん達と一緒に遊んでもらってるんですよ」