拾われサンタ、恋をする


廊下に出た僕たち三人は、とりあえずどこかに移動しましょうということになった。


「校内でどこか座れる所ってありますか?」


「そうですねぇ……」


「優衣お外行くー!」


「こら、静かにして。いいんですよ、子供に合わせてもらわなくても。外は寒いでしょうし」


暖を求める学生がジュース片手にごった返す、学生ロビー。


人のいない中庭の、冷えきったベンチ。


「……中庭にしましょうか」


「いいんですか?優衣はお外が好きなので、喜びますけど」


「なら尚更その方がいいです。こっちからすぐですよ」


亜紀さんと座ってる所なんて、知り合いに見られたらどれだけ冷やかされるか。


寒かろうが落ち着ける方がいいと僕は思ったけど、亜紀さん自身はどうなんだろう。


先導して歩きだしてから、ふとそう思って亜紀さんの方を振り向いた。


亜紀さんは優衣ちゃんと手を繋いで歩きながら、興味深そうにあちこち視線が忙しい。


パッと僕と目が合うと、ニコリと笑って見せる。


不満はないってことか。


言葉がなくてもそれは伝わってきて、僕は安心して歩を進めた。






目指した場所に着くなり、走っていこうとしていた優衣ちゃんを、亜紀さんが抱き止める。


「先にご挨拶しよう」


うん、と素直に頷いて、優衣ちゃんが僕のそばに寄ってきた。


僕の足の付け根に頭のてっぺんがくるくらいの背だ。


上から喋るのもどうかと思い、僕は芝生に膝をついた。


「寺嶋優衣です。お兄ちゃんだぁれ?」


「う……っ」


姿も可愛ければ、話し方まで可愛らしい!


気を張っていなければ、骨抜きのだらしない顔になってしまいそうだ。


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