拾われサンタ、恋をする


「南義大と言います。はじめまして、だね」


「……よしひろ君」


「優衣!」


いきなりの名前呼びを失礼だと思ったのだろう、亜紀さんが怒った顔で優衣ちゃんの肩を掴んだ。


「僕ならかまいませんよ。怒らないであげてください」


亜紀さんは渋々な様子でストップしてくれた。


かまわないどころか感動してます、とそこを口にしたら危ない人になるから、僕も自重したのだけれど。


「よしひろ君はママのお友達?」


「うーん、そうなるのかな」


なんて説明すればいいのか、ここはお母さん本人の意思を確かめておこうか。


亜紀さんの方を見ると、拳を額に当てたまま彼女は震えていた。


「……亜紀さん?」


「ううー言いたいー!言いたいです私!」


お願い、そこはちょっと頑張ってお母さん……。


「うん、お友達。ここは僕の学校。優衣ちゃんが来てるって聞いて、会いに来たんだ」


顔が無愛想なのはどうしようもないから、せめて言葉だけは優しいものを選んで話した。


努力の甲斐があったのか、優衣ちゃんはあまり警戒せずに僕と話をしてくれる。


「今日はお休みなんだってね?どこかに行くの?」


「うん、今日はじいじとばあば。クリスマスプレゼントくれてあげるって」


うわー須藤教授、デロンデロンに甘い顔して選んでそうだなー…


「ほんとのサンタさんからは、昨日起きたらもらった!」


「……よかったね。何もらった?」


「こーーーーんなクマさん!」


説明しながらの仕草が可愛すぎた、鼻血でるかも、絶対出さないけど!


「大きいからおうちなんだー。お外のごはん食べに行くからダメってママが言う」


「お留守番してくれてるんだね。家族で食事かあ……優衣ちゃんは食べ物で何が好き?」


「おこぜ!」


「お……」


幼児の奇想天外な回答は、見事に僕のツボをとらえた。

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