拾われサンタ、恋をする
声をあげて笑ったのは一体どのくらいぶりだろう。
キョトンとした優衣ちゃんの顔が、追い風となって笑いを煽る。
「よしひろ君、おこぜキライ?」
「美味しいけど……っ 僕は優衣ちゃんの歳では恐くて食べられなかったな。ハハ!優衣ちゃんすごいね」
「んふふー」
褒められて満足そうな顔は、見ているこっちまで幸せな気持ちにさせてくれる。
「引き止めてごめん、遊びに行っていいよ」
「うん!」
「あ、優衣!ママが見えるところにいてね!」
「いるよー」
優衣ちゃんは帽子のボンボンを揺らしながら、楽しそうに駆けていく。
ここはそんなに広くないし、見通しもいいから大丈夫だろう。
心配そうに見送る亜紀さんに「どこか座りましょうか」と声をかけた。
二人で日当たりのいいベンチを選び、僕は近づきすぎないように注意して腰を下ろす。
いくつになっても、女性と横並びの席は難しい。
「おてんばでしょう?困ってるんですよ」
「いえ、物怖じしない子ですね。あんなに話してくれると思ってなかったから嬉しいです。怖がられると思ってたんで」
「……どうしてですか?」
「子供の目から見たら僕なんて、何て声をかけたらいいのか分からない男じゃないですか。よく無表情だって言われるし」
「………」
「だから本当に嬉しい」
優衣ちゃんの話をしていたら、「おこぜ」を思い出してまた吹き出しそうになってくる。
口に手を当てて咳払いで誤魔化した―――けど誤魔化しきれない分がククっと小さな声になった。
「……誰が南くんのことを無表情だと言ったんですか?」
「えー、と………研究室の仲間とか、ですかね」
元カノの名前は出したくないので伏せた。