拾われサンタ、恋をする
「そんなこと言った人に見せてやりたいですね、優衣と話してる時の南くん。……ちゃんと笑ってますよ」
「あれはその、優衣ちゃんのおこぜが可笑しすぎて……」
墓穴を掘った!どんな締まりのない顔さらしてしまったんだ僕は!
亜紀さんの視線を感じて、顔に熱が上がる。
「子供って、笑うのが上手な人が好きみたいなんです。優衣は人懐っこい子ですけど、苦手な人には警戒するし近寄りません。きっと南くんが、話しやすかったんだと思います」
「………」
僕は嬉しいやら恥ずかしいやら、もう返す言葉もない。
『なんで笑ってくれないの、私のことがキライ?』
何度も何度も、紗理奈に言われたセリフ。
その度にそうじゃないよと否定したけれど、全く信じてもらえなかった。
言っても信用しない紗理奈にムカついていたけど、もしかしたら元々の原因を作っていたのは僕だったのか。
「よしひろ君、お手てパーして」
考え事にふけっていた僕は、優衣ちゃんの声に引き戻されて、慌てて手を出した。
僕の手のひらにポコポコと、形のいびつな土の団子が並ぶ。
「もーもたろさん、ももたろさん♪」
院生の僕からしたら随分懐かしい歌を、優衣ちゃんは振り付きで歌い始めた。
手を腰に当てて、膝をきゅっきゅっと曲げる仕草や、胸の前で腕を交錯させる動きが、言葉にならないくらい可愛い。
「亜紀さん……これは?」
「保育園で劇の練習をしているらしいんです」
「ああ、それで」
優衣ちゃんが犬と猿と雉を従える頃には、僕の片手で土団子が六個に増えていた。
それを持ったまま手首の所で拍手すると、嬉しそうにはにかんでいる。
「優衣がももたろ」
うん、見てたら分かったよ。
保育園での本当の役は「さる」だそうだが、それが不本意らしいことは、亜紀さんから耳打ちして教えてもらった。