拾われサンタ、恋をする


「そんなこと言った人に見せてやりたいですね、優衣と話してる時の南くん。……ちゃんと笑ってますよ」


「あれはその、優衣ちゃんのおこぜが可笑しすぎて……」


墓穴を掘った!どんな締まりのない顔さらしてしまったんだ僕は!


亜紀さんの視線を感じて、顔に熱が上がる。


「子供って、笑うのが上手な人が好きみたいなんです。優衣は人懐っこい子ですけど、苦手な人には警戒するし近寄りません。きっと南くんが、話しやすかったんだと思います」


「………」


僕は嬉しいやら恥ずかしいやら、もう返す言葉もない。


『なんで笑ってくれないの、私のことがキライ?』


何度も何度も、紗理奈に言われたセリフ。


その度にそうじゃないよと否定したけれど、全く信じてもらえなかった。


言っても信用しない紗理奈にムカついていたけど、もしかしたら元々の原因を作っていたのは僕だったのか。


「よしひろ君、お手てパーして」


考え事にふけっていた僕は、優衣ちゃんの声に引き戻されて、慌てて手を出した。


僕の手のひらにポコポコと、形のいびつな土の団子が並ぶ。


「もーもたろさん、ももたろさん♪」


院生の僕からしたら随分懐かしい歌を、優衣ちゃんは振り付きで歌い始めた。


手を腰に当てて、膝をきゅっきゅっと曲げる仕草や、胸の前で腕を交錯させる動きが、言葉にならないくらい可愛い。


「亜紀さん……これは?」


「保育園で劇の練習をしているらしいんです」


「ああ、それで」


優衣ちゃんが犬と猿と雉を従える頃には、僕の片手で土団子が六個に増えていた。


それを持ったまま手首の所で拍手すると、嬉しそうにはにかんでいる。


「優衣がももたろ」


うん、見てたら分かったよ。


保育園での本当の役は「さる」だそうだが、それが不本意らしいことは、亜紀さんから耳打ちして教えてもらった。


< 28 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop