拾われサンタ、恋をする
「優衣ちゃんは本物のきびだんご食べたことある?」
「ない」
「今度買ってきてあげようか、きびだんご」
「ほんと?」
期待で大きく開かれる目に頷いて答えると、「やったー!」と跳び跳ねながらまた走り出した。
「いいんですか、子供とそんな約束して…」
「はい、正月に帰省するのでその時にでも。あ、僕の実家が岡山なんです」
「岡山県って桃の?」
訊ねてきた亜紀さんの顔が、さっきのきびだんごを待つ優衣ちゃんの表情とそっくりだ。
「桃も有名ですね……ハハ、好きなんですか?残念ながら今はシーズンじゃなくてですね」
「え!別に催促したわけじゃ」
「だけどそんな顔してました、食べたいなーって」
慌てて赤くなる顔は予想通りだ。
年上のこの人に、なんだかしてやったりな気分になる。
「じゃあ、亜紀さんには何か他のもの見つけてきます」
「私までいいですから」
「さっきはお礼を言ったら、謝られてしまったので。その代わりだったらいいでしょう?」
僕の強引な提案に、しばらく考えてから俯いて「はい」と言ってくれた。
昼から教授と待ち合わせているということで、僕はそこで二人と別れることにした。
お土産を持っていく時のために、連絡先も教えてもらう。
ここ最近の僕は、本当についていなかったから……
どん底だったクリスマスの夜に拾ってくれたこの人と、繋がりを持てたことが嬉しい。
*
「じいじー」
「優衣。元気になってよかったなぁ」
大学教授の須藤が、腕に飛び込んできた孫をぎゅうっと抱きしめる。
小さい子供が寝込んでいるのは、大人から見ると本当に切ないことだ。
ましてかわいい孫となると。
「クリスマス寂しかった代わりに、今日はうんと美味しいもの食べようなぁ!」
「おさかなー!おこぜ!」
「優衣……そろそろハンバーグくらい言ったらどうだ?」
初めておこぜを優衣に食べさせたのは、何を隠そう須藤この人である。
家族で旅行に行った温泉宿で、怖がる孫に面白がって勧めたのだ。