拾われサンタ、恋をする
サンタ、帰省する
年末の新幹線移動は大混雑で、よほどの気合いがなければ参戦は難しい。
だから毎年、「正月くらいは顔見せろ」と言ってくる親からの連絡に、戦々恐々として備えている僕だ。
だけど今年は、優衣ちゃんと約束した吉備団子という大本命がある。
クリスマスが終わっても、サンタは子供のために努力を惜しまない。
早目に指定席おさえといて正解だったな。
東京駅の切符売場にできる長蛇の列を見て、心の底からそう思った。
新幹線のおかげで岡山駅までの移動は短時間で済むけれど、実家まではそこからが大変だ。
乗り換えを経て、北へ北へ。
県北に向かって電車は進み、少しずつ雪景色になってくる。
屋根が真っ白な帽子を被った駅が見えたら、ようやく僕の地元だ。
「うー寒い!」
顔に当たる風が冷たすぎて痛い。
夏に戻ってきたときは何とも思わないのに、この風を感じるとここは故郷だと思う。
手渡しの改札を出て、迎えの車を探してみるも……いない。
時間を間違ってんのかな?
手袋を外し、かじかむ指でなんとか家に電話を掛ける。
『はい南です』
出てきたのは母親だった。
「……もしもし?僕、義大」
『ああ!アンタ今どこにおんの?』
「駅着いたんじゃけど、父さんがおらん」
『はあ?こっち着くのいつも夜じゃろーが。父さーん、義大もう着いた言いよるよー!』
「………」
まだそこにいるんかい!
時間言ったぞ、絶対三回は言った!
父から母に伝えられた伝言は「すぐ行くからその場で待て」というものだった。
車で片道三十分以上はかかるはずだ。
父さん……あなたの忘却ミスで長男凍死したら、正月早々ニュースにあがっちゃうよ?