拾われサンタ、恋をする


「けどまぁ、貴大は根性だけはある奴じゃけぇ。仕事はどうにか続けよーわ」


「立派なもんだよ。貴大に先に社会人になられるとは思わんかったし」


「あとは嫁さんでももろーてくれりゃあ、言うことないと思わんか?」


「……そこを兄の僕に聞く?」


なんだか父が、弟のことに関してさっさと片付けたがっていることは分かってしまった。


あと二年大学に行くつもりの僕はどう思われているだろう。


「そういや、義大お前……」


ギクリ


「一体いつまで大学通う気なら。いい加減父さんはげるどー」


「………」


父との会話をぶちきって、僕はそこから家まで寝た振りを決め込んだ。







久し振りの実家。


父の後について居間に行くと、こたつとみかんの見慣れた光景があった。


「ただいま」


「あら!ほんとに帰ってきよーたが」


割烹着姿で動き回っている母は、おかえりよりもそう言ってきた。


「義大、どうせ時間あろーが。掃除てごーせぃ」


……手伝ってか。


久し振りに聞く方言で、しかも母ほど早口に話されると勘が戻るまでは戸惑ってしまう。


電話をした時も思ったけれど、どうやら母はイライラしているようだ。


「掃除ってどこの?」


「アンタん部屋じゃ!あがん本を親に片付けさすなぁ、このアンゴウが!」


母が呆れたような怒ったような口調で注意してきた。


あんな本って何のことだ?


本は高校までに使っていた教科書類以外、全部東京に持って行ったはずだ。


「まずあそこ片付けてきねぇ。布団も出さな寝れんじゃろう」


「………うん」


すごい勢いのまま、居間に座る暇もなく部屋の掃除を申し付けられた。


母が言っていた本というのには、全く心当たりがない。


前に帰省したときも、その時買ったものは東京に持ち帰っている。


階段を上がってすぐの引き戸をガラガラ開けて―――――見覚えのない光景に絶句した。


空のはずの本棚が……本棚が溢れている。


しかも漫画本ばかりだ、僕が買わないタイプの。


床には次の資源ごみに出す予定と思われる、ビニールテープに巻かれた雑誌の束が積んである。


「はあ?なんだこれ?」


岡山版のご当地ウォーカーなんて、関東にいながら僕が買うわけないじゃん。


不審に思ったので、ビニールテープにハサミを入れてひとつばらしてみた。


『ご当地ウォーカー』
『アレな本』
『コレな本』
『そっち系の本』
『激レア本』
『つまりエロ本』
『テレビガイド』


「…………」


当たり障りのない本と本の間に挟んである。


母さん、どこでこんな玄人の技を……

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