拾われサンタ、恋をする



年が明けて二日の朝、僕は一人で近くの和菓子屋に出掛けた。


亜紀さんに買って帰ろうと思っているお土産は、実は迷うまでもなく決めていた。


亜紀さんが桃と聞いて目を輝かせた瞬間の顔は、初めて見た幼い表情で、どうにも忘れられない。


車でやって来たのは、この辺りでは有名な老舗の和菓子屋さんで、正月の営業日はこの店のファンである母に確認済みだ。


「お邪魔します」


「いらっしゃい……あらぁ!南さんとこの!」


「はい。明けましておめでとうございます」


「おめでとうさん!おーおー相変わらずの好青年じゃあ!確か東京の学校に行きょーるんじゃねぇ?」


僕の情報を、母を通じてよく知っている人の一人だ。


田舎は色々と付き合いが狭くて深い。


「白桃のゼリー、まだありますか?」


「あるよぉ!うちの名物じゃけぇね」


「数はそんなにいらなくて、五個もあればいいんですけど」


「かまわんよ。用意するけぇ、ちょっと待ちねぇ」


綺麗な箱を選んで入れてくれるのを見ていたら、クリスマスにクマの包装で一悶着あったお兄さんを思い出した。


あの人は今日から仕事初めかな。


「義大くん、こんなんでええ?」


「十分ですよ。ありがとうございます。地元の土産ならこれかなって思って」


「小さい頃からえらい気に入ってくれよぉたねぇ。嬉しい嬉しい。一個おまけしとくけぇよ。帰ってきた時はまたおいでぇ」


「ありがと、おばさん」


久しぶりに顔を見せたのに親切にしてもらい、満足感に相乗効果を感じる。


車の助手席にそれをそっと置いて、落ちないよう家まで気を付けて帰った。







「未来のノーベル生理学賞、南義大が来ただぞー!」


「おかえり!博士ー!」


「……ただいま、お前ら何時から飲んでた?」


夕方顔を出した同窓会は、早い奴は朝から来ていたとのことで、何人か既に出来上がっていた。


離れた席から「よ!」と恩師の森先生が手で挨拶してくれる。


僕は酔っぱらいをかき分けて先生の近くの席にたどり着いた。


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