拾われサンタ、恋をする
「先生お久しぶりです」
「おお南。聞いたぞ、お前院に進んだらしいな」
「はい。悩みましたけど、もうちょっと研究したいこともあったから」
まずは飲むか?とグラスを持たされて、少しだけ入れてもらい、先生のものと小さく乾杯した。
「二年後には本物の博士だな。なぁー?南が一番有望だぞって言った先生は間違ってなかったろう」
近くの席に座っている同級生に向けて、得意気に森先生が胸を張った。
先生が言っているのは卒業式での出来事だ。
式が終わった後、教室で最後のHRが行われていた時、盛り上がった僕たちは「クラスで一番〇〇なのは誰か」という話題でずるずると下校を引き延ばしていた。
一番早く結婚しそうなのは?
一番お金持ちになりそうなのは?
お決まりの題材が並び黒板が埋まり始めたころ、「大人になって一番モテそうな男は?」という所に来た。
みんなが三人ほど爽やかイケメンの名を挙げていた中、この森先生が突然「そりゃあ南だろう」と言ったのだ。
頭は良いけど暗い、笑わない、運動できないと言われ続けてきた僕だ。
当然クラスはどっ!と笑いが起こった。
僕は今でもあの時の気まずさを思い出したら、いたたまれない気持ちになる。
「女子が結婚を意識したとき、男にどんな条件をつけてくるかの話になるわな」
「先生リアルにきつい」
「けど私今なら分かる!南くん絶対女に狙われるタイプ!すごい尽くしてくれそうじゃない?」
「……やめてよ」
その話題、今の僕にとっては傷を抉られるようなものなのに……
「南はドクター取った後、やっぱり東京で就職するつもりか?海外か?」
「東京で探すと思います。製薬会社を希望してますけど、どうなんでしょうね」
東京、と聞いて二人がはいはいと手を挙げた。
「俺も東京就職組」
「私も今本社勤務で東京にいまーす!」
卒業後東京に生活の場が移ったのはクラスでは僕だけだったのに、就職の年を迎えて向こうに行ってる人間が増えていたようだ。
といっても、僕を含めて三人だけど。