拾われサンタ、恋をする
「いつか東京メンバーで集まろうよ!」
「いいねー同郷の飲み!俺は上司の愚痴聞いてもらうわ」
「南くんもいい?」
人当たりの良い小田さんという女子が、僕も含めて話を振ってきた。
二人とも運動部所属で、高校時代の僕とはあまり関わりがなかった人達だ。
「小田ちゃんは南キープしたいだけじゃろー絶対!」
「あったりまえでしょ!南くんと繋がってたらK大生と合コンし放題じゃん!」
「公言したよこの子、サイテー!」
借り切っている二階の座敷はそんな話題で大賑わいだ。
……自分を使って笑いを持って行かれているのは、果たしておいしいと思っていいんだろうか。
「冗談はともかく、ほんとに東京で一回集まろう。ホームシックにかかったとき、皆でご飯食べに行かせて」
小田さんが顔の前で手を合わせて僕にそう言った。
上京して一年目なら、色々と苦労も多いだろう。
かつて僕も通った道だから、同郷の人間と繋がっていたい気持ちはよくわかる。
僕は二人と連絡先を交換しておいた。
「いやあーー、わーん!」
騒がしい部屋によく通る子供の泣き声がして、皆が一斉に注目する。
思っていた通り、小さい子を連れてきているクラスメイトがちらちらいたのだ。
僕は急いでカバンをあさった。
「義大?いきなりどうしたー?」
「小さい子も来てるかなと思って、子供の遊べそうなもの持ってきたんだ」
「え!準備いいなお前!」
子供連れのメンバーは遠慮があるのか、部屋の角に集まっている。
「その子、こんなの遊べるかな」
母親の輪に入って持ってきたものを差し出したら、感激したように迎えられた。
「南くん……!嘘ぉ、ありがとう!」
「三歳くらい?」
「そうなんよ。よくわかるね」
くずっていた男の子は、僕の手から車のおもちゃを取ってさっそく遊び始める。
目に新しいおもちゃは、とりあえず興味を引かれるらしい。
よかったと思って見ていたら、今度は隣にいた赤ちゃんが泣き始めた。