拾われサンタ、恋をする


「大変だね、お母さんって。赤ちゃんはさすがに、どうにもしてあげられないなぁ」


情けない顔をしてそう言えば、赤ちゃんをあやしながらママがふるふる首を横に振った。


「……私、旦那にそうやって言って欲しい…!」


彼女の叫びは大いにお母さんズの共感を呼んだ。


「やだっ……!南くんいい!優しいよ!独身女子に言っとくけど、こういう男と結婚した方が幸せになれるんだからね!」


「南くん!今度東京行くから泊めてぇ!」


「え、ちょっと……」


女子数名が、連絡先を書いたメモを僕のパンツのポケットにねじりこんでいる。


酒の力も手伝って、僕のシャツを引っ張ってくる人まで出てきた。


これには男メンバーから、一気に不満が沸き上がった。


「待てぇ!五年前は南のことをガリ勉ガリ勉って笑ってた奴らに言う資格ねーぞ!」


「うっさい!幸せ求めて何が悪い!」


「女って怖い……!」


みんな勝手なこと言って。


駄目だここは、ポジショニングを失敗した。


僕はお母さんゾーンから這い出て、さっきまで安全だった森先生の近くに座り直した。


「はっはっ!南は変わってないな。お前の沸点はどこにあるんだ。そんなことでは都会で騙されるぞ」


「先生……物騒なこと言わないでください」


「てかマジでさ、義大って彼女とかいんの?高校時代はそういう気配全くなかったよな」


「………」


前に座ってる奴が興味本意で聞いてきたのを、何人か聞き耳をたてているのがわかる。


「……今はいないよ」


「じゃあいたんだな!うおー想像できん!やっぱり頭いい子なんだろ、理系カップルっぽい」


「そういうんじゃないよ」


目を泳がせている僕にいち早く気がついたのは、やっぱり先生だ。


「はーん。南、さてはすでに騙された後か」


「………」


ここにも敵が……なんだかどこに座っても気が休まらない。

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