拾われサンタ、恋をする
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久しぶりに出た街は、クリスマスモード一色だ。
今朝まで研究室に籠っていた僕は、浦島太郎にでもなった気分で歩く。
今年初めて出したダウンコートは、それで正解とばかりに周りに馴染んでいた。
12月24日―――クリスマス・イヴ
前にやけくそでリクエストされた『一番大きなクマのぬいぐるみ』とやらを、ようやく今日買いに来ている。
あれ以来彼女からの連絡はなかったが、それもここ半年くらいよくあることだから、悩みもしなかった。
プレゼントを持って会いに行けば、また元通りの関係になるだろう。
「あのう、お客さま」
「はい」
「申し訳ございませんが、こちらの大きさに合う袋がご用意できません。もしよろしければ御印しだけでも……」
「いや、それは困ります」
店員のお兄さん、よく考えたら分かるでしょう。
いくらクリスマスとはいえ、幼児一人分くらいのクマ抱えて、どうやって地下鉄移動しろと?
んなの罰ゲームに等しいから。
「はは……でございますねぇ」
「笑ってる場合じゃなくて。簡単でいいので、包装紙を繋げるとか。それに簡易なリボンでもつけてもらえませんか」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そこまで提案させてたら接客としてアウトだと思う。
でもこの人、町中が盛り上がってる今日も、こうして働いてんだよなぁ。
包装紙と格闘する背中に、ごくろうさまと心の中で告げた。