拾われサンタ、恋をする


「飲め飲め、義大!最初は大抵失敗するもんだって」


「男に下心が備わっている時点で、駆け引きの勝敗は決まってんだからさ」


「わかるわー俺も泣かれたら負ける。謝る。そしてこじれる」


先生の元に男が集まってきて、僕にとっても興味深い話が始まった。


どうやら男性陣はみんな同じような苦い経験があるらしい。


「特に義大みたいに女っ気のなかった奴はなぁ。こういうのが女子!っていう幻想があんだよ」


それは確かに、そうかもしれない。


女の子は髪が長くてスカートがよく似合う方がいい、とか。


実際、僕は紗理奈を初めて見たときに、女の子そのものだなぁという感想を持っていたと思う。


彼女の外見が好みだったのか……とにかく僕のツボだったのは否定できない。


「おーおー、それなら先生も若い頃は胸の大きい子がよかったわー」


森先生がいきなり暴露するので、どかんと場が沸いた。


「それ嫌いな男はいないっしょ!」


「義大の研究なんてまんまそれだよなー、フェロモンの研究してんだぜ、コイツ」


「……ホルモンだよ」


「似たようなもんだろ?」


もう訂正する気持ちにもならない。


そこで森先生が咳払いをひとつして、教え子たちに語り始めた。


「いいか、お前ら。結婚相手に求めるもののポイントを教えてやる。それはズバリ、自分にないものを持っている人であることだ」


「でもそれじゃー、性格の不一致で離婚になるけぇ先生」


「バカ、誰が反対の人だと言った?ないものを持っている人だよ。そのためにはまず、自分に欠けている所をよく理解しておくことだな」


喋りすぎる奴は、聞き上手な人を。


愛想が悪い奴は、輪を作れる人を。


「南みたいに笑うのが苦手な奴は、笑うのが上手な人を探すといいんじゃないか」


そういう人とは長く一緒にいられるだろうよ、と言って先生は一口ビールを飲んだ。


年の功で指摘されたことが、この時とても心に残った。


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