拾われサンタ、恋をする
「うわー先生の説教、なんか俺胸が痛むわぁ」
「胸が痛い奴は軽い付き合いばっかりしてるんだろう、ざまあみろだ」
社会に出てない僕は、結婚なんてまだまだ先のことに思うけれど、ここにいる大半はもう社会人なのだ。
こういう話になるのも、普通なのかもしれない。
「結婚式に呼んだら先生来てくれる?」
「いいぞぉーお前らの当時の成績持ち込んでスライドで流してやる」
「俺呼べない!」
大勢の笑い声が何度も起こる。
僕は小さく笑って参加するくらいだけど、こういう雰囲気は嫌いではない。
少し顔を出すだけのつもりが、随分長居をすることになった。
*
三日間の帰省を終え、また混み合う新幹線で東京へ戻る。
途中、岡山駅で優衣ちゃんへのお土産を選び、僕の目的はこれで完遂できた。
……いつ持っていこうかな。
早く渡してあげたいけれど、さすがに三が日は迷惑というものだろう。
自分のマンションに帰る前に、僕は研究室に立ち寄った。
この寄り道のおかげで、思いがけないことに巻き込まれてしまうのだ。
夕方に着いた、誰もいないはずの研究室から薄明かりが漏れていた。
おそるおそるドアを開けてみれば、直後にでかい男のタックルをお見舞される。
「うわぁ……っ……大西?」
「うううぅ南先輩ーーー!」
肩にグリグリ押し付けてくる頭が妙に臭う。
「お前、いつからここにいた?」
「大晦日からずっとですぅ」
「はあ?」
おいおい泣きじゃくる大西を椅子に座らせて、その汚い顔にタオルを押しつけ、自分も向かい合わせに腰かけた。
「俺、実験で結果残せてないじゃないっすか。だからギリギリまで次の仕掛け作ってたんです。そしたら一匹だけ反応示したマウスがいて」
「記録してるうちに自分だけここを離れられなくなったって?」
「そうなんですよ、ここでハッピーニューイヤーですよ!頭おかしくなりそうです」
「………」
部屋のゴミ箱は、大西が食べ散らかしたと思われるコンビニ弁当のゴミで溢れている。