拾われサンタ、恋をする
「……正月は実家に帰るって言ってなかった?」
「はい、親にも帰るっていってたのに……親不孝してしまいました……」
しかも居残りを決めた瞬間反応が弱くなり、教授も不在の中で自分では判断ができなかったらしい。
今日が三日ということは、教授がくるまであと二日ある。
「わかった。ちょっと待ってて」
精神的に追い詰められている大西は、よほど寂しかったのかぐずぐず泣き続けている。
僕はロッカールームに行き、暖房が切れたままの部屋でニット帽とダウンジャケット、靴も脱いだ。
上靴に足を入れると、靴下を履いていてもつま先でキンキン冷たさを感じた。
旅行かばんはロッカーに押し込み、優衣ちゃんと亜紀さんへのお土産をそっとその上に乗せる。
「さて、と」
いつものスタイルだから、鏡で確認する必要もない。
その格好で実験室に戻った僕に、大西はもう一度激しいタックルを加えてきた。
「付き合ってくれるんですかぁ!先輩!」
「そうじゃないって。観察引き継いでやるから、大西は一旦帰ったらどう?今からだったら実家で一泊くらいしてこれるんじゃない?」
「でも……先輩は?」
「もう下宿先に戻るだけだったから、いいよ。大西が戻ってくるまで見ててやる。五日の朝には絶対交代しろよ、それが限界」
「先輩すみません……俺なんかのために入浴を犠牲に」
「お前はすぐにシャワー浴びた方がいいかも。汚れが溜まってる」
大西が使っているマウスの前に座って、彼の実験ノートに目を通した。
不貞腐れていた割にまじめに定期的に観察を行っているのが見て取れて、少し面白い。
「大西これ……犠牲にするのは入浴じゃなくて睡眠の方じゃない?」
「そうともいいます。本っ当にすみません!今度何か奢ります!」
「………」
安請け合いするんじゃなかったと思っても、もうその気で帰り支度を始めている大西に何も言えない。