拾われサンタ、恋をする
「寝不足です、すみませんこんな格好で。あけましておめでとうございます」
「あーいい、いい。横になってろ。上本、教えてくれ」
須藤教授は僕の代わりに机に座っているクマ先輩から、状況を聞きだしてくれた。
「連絡してくれたら見に来てやったのに」
事情を聞いた教授のその言葉には、余計な気遣いをした大西の労をねぎらう意味もこもっているように聞こえる。
そしてその実験ノートにざっと目を通した瞬間、教授が言い放った言葉はというと。
「これ全く意味ないじゃないか。馬鹿じゃないか?大西の奴。一時間おきって」
「………」
そうなんです、馬鹿なんですアイツ。
無意味なことに労力かけてるし、勝手に精神的に追い詰められて泣いてるし。
そしてその馬鹿に二日間付き合った僕のことを、そんな同情の目で見るのやめてもらってもいいですか。
「お前自身の実験はどうなんだ?」
「僕の分はちゃんと年内に目途つけてます」
「だろうな。はあーこりゃ、とばっちりもいいとこだ」
「南だから付き合えたんですよ。俺だったら目の前で否定してやったと思います」
クマ先輩が意外な評価を僕に付けたころ、入り口から気分爽快な大西の挨拶が聞こえた。
「おはようございます!いい朝だぁ!」
僕の二日分の睡眠は、お前のリフレッシュのためだけには貢献できたみたいだな。
「大西!ここに来い!」
「教授?あれ、どうしたんですか南先輩?」
「どうしたじゃないだろう、この阿呆!」
須藤教授のゲンコツが入る直前で、ぼくはソロリと手を挙げた。
「言ってやらなかった僕も悪いので」
ことを知った大西は、案の定泣きそうな顔になっている。
一生懸命やった結果を叱られるのは可哀想だ。
「……とりあえず南はすぐに帰宅して休め。有給をずらして使ったと思えばいい」
「ありがとうございます」
このままここにいても迷惑をかけそうなので、教授の言葉に甘えることにした。